製造業や研究開発の現場では、センサーデータや画像処理、シミュレーション結果など、膨大なデータをリアルタイムで処理するニーズが年々高まっています。先日開発したあるソフトウェアでは、1秒間に約30万件の2次元データを処理する必要がありました。これだけのデータ量になると、気にせず実装すると要求速度に間に合わなくなります。
今回は高速化のために以下のようなチューニングを行いました。どれも派手さはありませんが、確実に効くテクニックです。
1. クラスではなく構造体(struct)を使う
C#などの言語では、クラスはヒープに配置されるため、GC(ガーベジコレクション)の影響を受けやすくなります。構造体はスタックに配置されるため、生成・破棄のコストが低く、処理速度に貢献します。特に大量のデータを扱う場合、この差は無視できません。
2. ListやDictionaryを避け、配列を使う
コレクションクラスは便利ですが、内部的にメモリの再確保やハッシュ計算などが発生し、オーバーヘッドが大きくなります。今回は、あえて2次元配列を使い、アクセスパターンを最適化しました。これにより、CPUキャッシュの効率も向上しました。ただし単に2次元配列にするとコードの書き方が古臭く保守しずらくなるため、2次元配列ということを意識せずにアクセスするための拡張メソッドを大量に追加しました。
3. インスタンスのプーリング
毎回 new して破棄するのではなく、使い終わったインスタンスを再利用する「オブジェクトプール」を導入しました。これにより、GCの発生頻度を抑え、安定したスループットを実現しています。今回の場合、グラフ描画などのGUIで威力を発揮しました。
結果
これらの地道な最適化を積み重ねた結果、無事にお客様の要求する処理速度をクリアすることができました。見た目は地味ですが、こうした「低レイヤーの工夫」が、システム全体の性能を大きく左右します。見えないところで効く技術は大事です。
